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TRSⅡコラム

修繕工事の劣化図と拾い出し―建物の健康診断

修繕工事の劣化図と拾い出し―建物の健康診断
建物の保全と維持は、単なる美観だけではなく、その構造と機能を長期にわたって維持するための重要な要素です。
修繕工事はその一部であり、建物の劣化図と拾い出しはこのプロセスの重要なステップとなります。
本稿では、劣化図と拾い出しを軸に、調査・積算の標準化とDXをどのように進めるかを深掘りします。


1. 劣化図とは何か

「劣化図」とは、建物の老朽化や劣化の状態を可視化するための図面のことです。 これには、建物全体の外観だけでなく、個々の部材や設備、さらには細部にまで及ぶ詳細な情報が含まれます。 例えば、壁のクラック、屋根の漏水、塗装の浮きや剥離、その他躯体に関する異常なポイントなど、様々な劣化の形跡を記録します。 この劣化図を作成することで、建物の現状を正確に把握し、必要な修繕工事を計画することが可能となります。

劣化図がもたらす主な価値

  • 全体俯瞰と優先順位づけ
    劣化の種類・度合いを一枚に集約することで、構造安全性や美観への影響度を比較検討しやすくなります。結果として、補修範囲と⾧期修繕計画の整合が取りやすくなり、不要な予算計上を避けられます。

  • 数量積算の信頼性向上
    損傷範囲を図示したまま集計を行うため、「なぜその数量になったのか」を発注者に説明しやすく、発注後の設計変更にも迅速に追随できます。調査写真やコメントを紐づければ証跡も明確です。

  • ノウハウのデジタル継承
    ベテラン技術者が慣習的に持つ拾い順序や注意ポイントを、図面テンプレートや部位定義として組み込むことで標準化を促進。属人的な判断を減らし、若手の立ち上がりを短縮します。

2. 劣化図作成の流れ

作成手順は大きく「事前情報収集」「現地調査」「図面化」「レビュー」の4段階です。 事前に竣工図と過去修繕履歴を確認し、現地では打診・目視・赤外線などで部位ごとの劣化を拾います。 帰社後、調査結果を図面にプロットし、数量を紐づけて一次案を作成。最後に現場・設計・積算担当者がレビューし、修繕方針とコスト仮説を確定させます。


3. 劣化図を作成する方法とツール

現地調査では、印刷した立面図やタブレットを携え、打診棒やチェーンドラッグで浮き・欠損音を確認しながら油性ペンや色テープでマーキングします。外壁全面を短時間で把握したい場合はドローン撮影や赤外線サーモグラフィを併用し、高所や見落としがちな箇所を可視化。写真はデジカメやスマホで撮影し、図面番号を口頭録音しておくと帰社後の照合がスムーズです。

調査データを図面化する段階では、まず汎用CADを用いてひび割れ・浮き・剥離・欠損を描き込むケースが一般的です。しかし汎用CADの場合、図形に属性が付かないため修正のたびに手間が発生し、連番ズレや凡例抜け、集計ミスなどのリスクも残ります。 TRSⅡなら、劣化種別・面積・長さなどの属性を図形に紐づけられ、紙図面や写真を貼り付けてトレースするだけで劣化図が完成します。さらに別途記録したExcelデータを読み込めば部位名称やランクを自動参照。連番更新・数量集計・Excel出力がワンクリックで完結するため、二重入力や手戻りを大幅に削減し、根拠資料を短時間で整備できます。


4. 拾い出しの基本と連携

拾い出しは、劣化図で可視化した損傷部位を材料・工種別数量に置き換える工程です。 コンクリート補修なら躯体面積とひび割れ延長、シーリングなら目地長さ、塗装なら塗装面積―と、部位ごとに必要な単位が異なります。 劣化図上で部位属性を持たせておくと、拾いは半自動化できます。数量はExcelや見積システムと連携し、工種ごとの単価設定に反映することで予算精度を高められます。


5. 劣化図作成時の注意点

最も重要なのは“再現性”です。写真位置・撮影方向・図面縮尺・凡例を統一しなければ、後工程で誤解を招きます。 また、劣化ランクの判定基準を明文化し、「A=経過観察、B=軽微補修、C=要補強」など社内基準を設定すると査定のぶれを抑えられます。 最後に、図・数量・注記を同一データベースで管理し、修正が入った際に自動追従するかを確認しましょう。


6. ノウハウ継承の課題と解決策

調査・拾いは経験値がものを言う世界ですが、担い手の高齢化が進む一方、若手は現場経験を積む時間が限られています。 そこで劣化ランク判定ロジックや拾いテンプレートをデジタル化し、「迷ったら基準を参照できる仕組み」を組み込むことが急務です。 劣化図面上に軌跡が残るので各現場の写真と図面を紐づけて管理しておくことで、過去の対処方法をいつでも確認できるようになります。 実地教育では、先輩の現場マーキングを動画で残し、社内で勉強会を行ったり動画を閲覧できる環境を用意すると反復学習が促進されます。


7. TRSⅡで広がる可能性

TRSⅡ下地は、劣化図の作成と補修積算をワンストップで支援するシステムです。
直接入力・図面トレース・Excel取込の3通りで劣化情報を登録でき、集計結果はボタン一つでExcel出力できます。 ひび割れ・浮き・欠損など多彩な表現機能や自動連番更新、アンカーピン本数自動計算などにより「図面精度」と「数量根拠」の双方を高め、調査会社・施工会社の現場負荷を大幅に軽減します。

現場が抱える課題とTRSⅡ下地による解決イメージ
課題影響解決策
二重入力と転記ミス 紙図面→CAD→Excelと工程が増え、数量誤差や作業時間が膨張 直接入力・トレース・Excel取込のいずれでも劣化情報を登録し、集計を自動出力。作業時間を40〜50%短縮します。
連番や凡例の手修正 符号ズレ・凡例抜けが発生し、図面確認と再集計に追われる 劣化図形の追加・削除に合わせて連番を自動更新。補修凡例と集計表も自動生成されるため、確認工数を大幅に削減します。
アンカーピン・タイル数の手計算 数量差異が見積精度を下げ、利益圧迫リスクを招く アンカーピンニング工法の穴数や小口タイル枚数を自動計算。拾い忘れ防止と根拠提示を同時に実現し、見積精度を向上させます。

8. まとめ

劣化図と拾い出しは建物の「未病」を捉える必須プロセスです。調査を標準化し、数量根拠を透明化することで、工事会社は提案力と収益性を両立できます。 TRSⅡのような専用システムを導入すれば、これまで個人に依存していたノウハウをチームで共有しやすくなり、日々の業務改善を後押ししてくれるはずです。


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