大規模修繕工事と88条申請の全体像

マンションやビルの大規模修繕工事を計画する際、建物の寿命延伸と資産価値維持に意識が向きがちですが、安全面で最も重要なのが労働安全衛生法第88条に基づく「88条申請」です。
本申請は、足場や仮設機械を設置する高所・長期工事で労働災害を未然に防ぐことを目的に義務付けられています。
申請を怠ると工期遅延や罰則、社会的信用の失墜を招くため、管理組合や発注者は早い段階から手続きを把握しておく必要があります。
本申請は、足場や仮設機械を設置する高所・長期工事で労働災害を未然に防ぐことを目的に義務付けられています。
申請を怠ると工期遅延や罰則、社会的信用の失墜を招くため、管理組合や発注者は早い段階から手続きを把握しておく必要があります。
88条申請とは?
88条申請は正式には「建設工事計画届」「機械等設置届」など複数の様式を含み、労働基準監督署長(工事規模によっては厚生労働大臣)へ届け出る安全計画書です。
労安法88条第2項では塔・ダムなど超大規模工事を着工30日前までに、同条第3項では、「高さ31 m超の建築物の新築・改修・解体」「最大支間50 m超の橋梁建設」「掘削深度10 m超の地山掘削」などを着工14日前までに届出るよう規定しています。
これらに該当しない場合でも、施行令や行政通達で足場高さ・設置期間に関する基準が細かく定められており、「該当しない工事だから安全書類を出さなくていい」という判断は危険です。
特に居住者が生活しながら行うマンション改修では監督署が追加資料を求める例も増えています。
労安法88条第2項では塔・ダムなど超大規模工事を着工30日前までに、同条第3項では、「高さ31 m超の建築物の新築・改修・解体」「最大支間50 m超の橋梁建設」「掘削深度10 m超の地山掘削」などを着工14日前までに届出るよう規定しています。
これらに該当しない場合でも、施行令や行政通達で足場高さ・設置期間に関する基準が細かく定められており、「該当しない工事だから安全書類を出さなくていい」という判断は危険です。
特に居住者が生活しながら行うマンション改修では監督署が追加資料を求める例も増えています。
なぜ大規模修繕で88条申請が必要になるのか
大規模修繕は「壁・柱・床・梁・屋根・階段の半分以上を修繕する工事」とされ、主要構造部に手を加えるため、10 m超の外部足場やゴンドラを60日以上設置するケースが一般的です。
この場合、機械等設置届の提出要件(高さ10 m超×60日超×着工30日前)が該当し、多くのマンション改修現場で88条申請が必須となるのです。
只、安全配慮義務違反による損害賠償リスクを低減するための自主的対応で、ゼネコン各社が社内基準で義務化する傾向にあり高さ10 m未満でも長期占用や歩行者動線と交差する場合は「監督署相談の上、届出」が推奨されています。
この場合、機械等設置届の提出要件(高さ10 m超×60日超×着工30日前)が該当し、多くのマンション改修現場で88条申請が必須となるのです。
只、安全配慮義務違反による損害賠償リスクを低減するための自主的対応で、ゼネコン各社が社内基準で義務化する傾向にあり高さ10 m未満でも長期占用や歩行者動線と交差する場合は「監督署相談の上、届出」が推奨されています。
申請が必要になる主な基準と工事例
判断基準 | 具体例 | 該当届出 |
---|---|---|
足場高さ10 m超かつ設置期間60日超 | 12階建てマンション外壁補修 | 機械等設置届 |
高さ31 m超の建築物改修 | 20階建タワーマンション大規模修繕 | 建設工事計画届 |
地山掘削10 m超 | 立体駐車場基礎補強 | 建設工事計画届 |
石綿除去を伴う準耐火建築物 | 吹付けアスベスト除去工事 | 建設工事計画届 |
対象外でも労基署が求めた場合 | 騒音苦情が多発する高圧洗浄作業 | 監督署指示に従い追加届出 |
88条申請の手続きフロー
88条申請は以下の流れで行われるのが一般的です。
- 工事計画の確定(約4〜5か月前) – 修繕範囲・工程表を決定
- 仮設計画・足場構造計算(約3か月前) – 風荷重・地震荷重を反映した強度計算
- 書類作成(約2か月前) – 様式第20・21号、施工体制台帳など
- 労基署事前相談(〜着工30日前) – 電子申請でも初回は窓口相談が安全
- 正式提出(30日/14日前) – 受付印付き写しを現場・管理組合へ配布
- 工事中の是正指導・変更届 – 足場形状変更時は速やかに再申請
- 完了報告書提出(竣工後) – 竣工写真・安全成績を添付
88条申請の必要書類と作成ポイント
88条申請を行う際に用意する書類と作成のポイントは以下の通りです。ポイントを抑えて作成することで不備を指摘されず進めることが出来ます。
また、申請から受付までに平均1〜2週間、補正でさらに10日程度を要します。足場着手まで最低60〜70日の余裕を持つと、余裕を持った書類作成を心がける必要があります。
また、申請から受付までに平均1〜2週間、補正でさらに10日程度を要します。足場着手まで最低60〜70日の余裕を持つと、余裕を持った書類作成を心がける必要があります。
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届出書(様式20・21号)
工事概要とリスク対策を具体的に記載。現場特有の危険要因(落下・飛散・騒音など)と対策を明文化。 -
構造計算書
足場・支保工の許容応力度を明示し、第三者チェック(安全衛生コンサルタントなど)を推奨。構造計算の不備は補正率が高いため、レビュー添付で受理率が向上。 -
足場計画図(平面図・立面図)
足場の配置、高さ・支柱間隔、アンチ落下装置や養生ネットの位置を平面・立面の両面から示す。道路占用範囲や避難動線と重ねて可視化することで補正を回避。 -
配置図・立面図
道路占用範囲、クレーン旋回域、避難動線を明確化。近隣物件との離隔も寸法入りで示す。 -
作業手順書・安全管理体制図
高所作業車やゴンドラの接触防止策、墜落防止設備の点検手順を記載。災害・緊急時フローも合わせて掲載。 -
参画者経歴書
監理技術者の資格、CPDS(継続的職業能力開発システム)受講状況、類似工事実績を明示し技術力を裏付け。
罰則・リスクと失敗事例
88条申請を怠ったまま工事を開始すると、労働安全衛生法120条に基づき「罰金50万円以下」に加えて工事停止命令が科される恐れがあります。さらに事故が発生した場合、損害賠償は数千万円規模に達することもめずらしくありません。
失敗事例
失敗事例
- 提出期限誤認で足場組立が2週間遅延 ― 仮設費用100万円超増
- 構造計算ソフトのバージョン違いで再計算命令 ― 延べ80人時追加
- 石綿除去作業区分誤り ― 飛散防止養生コスト1.3倍
DX時代の申請業務と電子化の動向
2024年の厚労省通達により、88条関連届出の電子申請義務化が段階的に拡大中です。
電子申請を活用すると窓口待ち時間や郵送コストを削減できますが、「電子署名付きPDF」や「CADデータのバージョン制限」など新たなチェックポイントも増えています。
BIM連携の自動チェックシステム導入で作業時間を30%削減した事例も報告されています。
電子申請の例
電子申請を活用すると窓口待ち時間や郵送コストを削減できますが、「電子署名付きPDF」や「CADデータのバージョン制限」など新たなチェックポイントも増えています。
BIM連携の自動チェックシステム導入で作業時間を30%削減した事例も報告されています。
電子申請の例
- 労働安全衛生法第88条に基づく各種届出(建設工事計画届・機械等設置届)は、政府の電子申請ポータルサイト「e-Gov」でオンライン提出できます。役所へ出向く必要がなく、現場から24時間いつでも送信できます。
- 建設業許可申請や経営事項審査(経審)は、国土交通省と都道府県が共同運営する「建設業電子申請ポータル」で受付中。2025年6月時点で47都道府県中46府県と国土交通大臣許可が対応済みです。
- 建築確認申請は、国土交通省の「建築確認・検査共通WEBアプリケーション」を使って電子申請が可能です。BIMで作成したIFC形式のデータをそのまま提出できるため、図面を紙やPDFに変換する手間が省けます。
まとめ
88条申請は「安全」と「工期」を守る必須プロセスです。着工ギリギリの提出では補正リスクが高まり工程を圧迫します。管理組合・発注者は施工会社任せにせず、着工70日前までの提出完了を目標に逆算スケジュールを策定しましょう。本記事を参考に、法令遵守で資産価値を高める大規模修繕を実現してください。
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