建築業におけるCPDとは？概要・メリットをご紹介

この記事に目を通してくださっているのは、建築業界に身を置いて働かれている方ではないかと思います。さまざまな建築を手掛けて街並みを形作っていく建築業は、現代社会を維持していくために欠かせない存在です。

そんな建築業界において近年重要視されているCPDという制度について、みなさまはご存知でしょうか。業界に属して働いていると耳にしたことはあるかもしれませんが、詳しい内容についてはまだ把握できていないという方も多いのではないかと思います。CPDは人材の質を高め、業界全体の施工品質を維持していくための制度であり、建築業の第一線で働いていくのであれば避けては通れません。

今回は、建築業におけるCPDの概要とそのメリットについて、詳しくご紹介させていただきます。

まず、CPDの概要について見ていきましょう。CPDとはContinuing Professional Developmentの頭文字を取って並べた言葉であり、継続教育という意味を表しています。これは建築業を担っていく技術者が個人の意思に基づいて、施工に求められるスキルの維持と、さらなる向上を図っていくことを目的として設けられた制度です。CPDの始まりは平成14年であり、建築士会によって建築士の知識レベル、技術水準を高めていくことを目的としてスタートしました。平成21年を境に、その対象がすべての建築士に広げられ、研修が行われるようになっています。そして現在ではCPD制度はさらに対象を拡大しており、建築士に限らず建築業におけるさまざまな分野で実施されています。

CPD制度による研修の対象となるのは、基本的に建築業に関するさまざまな資格の有資格者です。上述した建築士以外にも、技術士、建築施工管理技士、土木施工管理技士などの有資格者を対象としたCPD制度が開催されています。CPDによって開催される研修を受講すると、能力に応じてCPD単位という評価を受けることができます。これはその資格に関する業務について、どれだけのスキルを備えているかを証明するための単位であり、技術者の技量を客観的な尺度で示してくれるものだと言えるでしょう。

CPD制度の主な目的は、技術者の研鑽を促すことです。多くの人にとって、継続的に努力し続けることは容易ではありません。そして、資格という社会的な評価を保証されるものを取得することができたことによって安心し、技術の研鑽を怠ってしまう有資格者も少なくありません。

特に建築業界における建築士や施工管理技士といった資格は、その仕事が建築現場における品質を大きく左右します。ひいては社会全体に大きな影響を与えていく存在であり、その業務には常に一定以上のクオリティが担保されていなければなりません。しかし、かつての建築業界では一度資格を取得して以降は勉強や研鑽などを怠り、新たな知識や技術を身に付けていく努力をせず、低クオリティな業務を行ってしまう有資格者が見られました。品質の低い業務を提供する業者が増えれば、業界全体の信頼性が損なわれ、資格の価値も低下していってしまいます。

そのようなことを避けるために、技術者の積極的な研鑽を促していくことを目的として、CPD制度は制定されました。建築現場において有資格者の技量が不足していれば、施工クオリティの低下はもちろん、正しくない施工によって現場に危険を招いてしまいかねません。社会の質や現場の安全性といった重要な要素に関わっている資格だからこそ、相応に高い志が求められているのだと言えるでしょう。

改めて研修を受けなければならないと言われると、有資格者の方にとってはデメリットのようにしか感じられないかもしれません。しかし実際には、CPD制度は有資格者に大きなメリットを与えてくれる制度です。というのも、以前は有資格者の評価が横並びとなっていて、一度資格を取得してしまえばその後の努力に関わらず、同程度の評価しか得ることができませんでした。施工の実績を重ねていけばそのことに関する評価を得ることはできますが、それは個人の評価が高まっただけであり、資格の価値が上がったわけではありません。

しかし、CPD制度では前述の通り、CPD単位と呼ばれる評価を得ることができます。これは他者からも可視化された有資格者としての能力を示す指標であり、同じ資格を取っているから同じ能力というわけではなく、有資格者の中でも特に優れた存在を示すことができるといえるでしょう。

CPD単位の社会的価値はとても大きく、例えば行政機関による施工の入札時には、CPD単位は評価対象の1つとして重い扱いを受けています。優秀なCPD単位を取得することができれば、業界内において抜きん出た業績を挙げていく足掛かりとなってくれるでしょう。CPD制度は努力や研鑽を見える化してくれるものであり、評価されるべき人が正当な評価を得られるようにした、極めて公明正大な制度です。

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