電気工事に必須な歩掛とは？概要や歩掛データ使用時の注意点を解説

電気工事士は社会を支える重要なインフラである電気に関するさまざまな施工を行い、生活の基盤を支えています。電気は非常に便利なエネルギーですが、同時に感電などのリスクが伴う存在でもあり、その扱いには専門的な知識が求められます。そのため、電気工事士として働くためには専門の資格などを取得しなければならないのが特徴です。

電気工事士の仕事で特徴の1つとして挙げられることが、施工と関連する事務作業の複雑さです。現在、電気工事士としてご活躍されている方の中には、事務作業を大きな負担に感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

今回は電気工事に従事されている方に向けて、電気工事の事務における歩掛（ぶがかり）という作業について、さまざまな情報をご紹介いたします。歩掛や積算の基礎知識について不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

歩掛とは、さまざまな分野の施工において作業を進めていく上で必要になる作業手間を数値として表したものです。コストを管理しながら工事を行うためには材料などの数を正確に数える必要がありますが、実際の現場ではそれだけでなく、現場で働くスタッフの方々の労務費というコストが発生します。電気工事全体にかかるコストを積算していくためには、労務費は必ず含めなければならない数値であり、それを算出するためには歩掛が欠かせません。

仮に歩掛を安易に行ってしまうと積算に大きな狂いが生じ、コスト管理がずさんになってしまいます。歩掛は建設業界において非常に重要な数値であり、国土交通省においても建設工事、電気工事、機械設備工事などの「標準歩掛」を毎年制定しています。これは国土交通省のホームページで閲覧することができ、各業界の現状を知るための大切な目安になるため、チェックしてみてください。

例えば、材料に関する積算は材料の価格に必要な数を掛けることで、スムーズに求めることができますが、歩掛は計算が非常に複雑です。なぜなら、歩掛によって求められる労務費は施工を手掛けるスタッフの技術や現場の環境、用いられる材料の種類や使用する工具などの条件によって、細かく異なるからです。経験の浅いスタッフだと4時間かかる作業でも、熟練のスタッフだと2時間で終わるようなケースもあるため、それらを踏まえて積算を行わなければなりません。

建設業界に類される数々の業種の中でも、電気工事は歩掛の重要性が非常に高い業界だと言えます。電気工事の現場で行われる施工は非常に複雑で、施工の種類も多いことが特徴であり、施工の種類ごとに歩掛の計算は細かく変化します。歩掛を含めたコスト管理は、電気工事で利益を上げていくために欠かせない作業です。仮に大ざっぱな数値で見積もりを出してしまうと、実際に施工を行った際にかかるコストと見合わず、依頼を受注したにも関わらず赤字になってしまったという事態を招いてしまいかねません。相場よりも高額な費用を提示してしまい、他社との比較を通じて自社の信頼性が損なわれてしまうという、利益面以外も損失するリスクが生じてしまいます。

電気工事において歩掛を使用した積算を行い、コストを計算していく際は、人工（にんく）と呼ばれる単位が用いられます。1人工は作業員1人が1日（8時間）でこなすことができる作業量と定められており、人工＝（1人×必要作業時間）÷8時間という計算式で積算が行われるのが特徴です。

例えば、作業員1人が4時間で終えることができる作業の場合、（1人×4時間）÷8時間＝0.5人工という計算が成り立ちます。歩掛に数量を掛け、そこに作業員の報酬単価である労務単価を掛けたものが、最終的な労務費として算出されることになります。

上記の大まかな流れは建設業界全体に共通するものであり、電気工事であっても例外ではありません。電気工事士として活躍していくためには、歩掛の概念と計算式を正しく把握し、計算できるようにしておきましょう。

電気工事で歩掛データを使用する際に注意することは、歩掛は現場や材料の種類、行われる施工の内容・難易度によって変わってくるということです。この計算は企業ごとに設定した目安を前提に行われるものとされていますが、実際は国土交通省が設定している「公共建築工事標準単価積算基準」を参考にしている企業が多いです。公共建築工事標準単価積算基準には業種別に、材料の種類とサイズごとに異なるデータが細かく掲載されています。標準歩掛を目安として計算することで、相場に則した正確な見積もりなどを出すことができるでしょう。

歩掛データを使用する際は、国土交通省によって基準となるデータが提示されているという点がポイントになります。多くの業者が共通のデータを使用しているため、仮に正確でない計算を行ってしまうと自社の数値だけが業界のおける平均と乖離してしまうという事態が起きかねません。また、国土交通省が公表しているデータは実態調査や技術革新の影響を受けて、その内容が改定される場合もあります。同じデータを使い続けるのではなく、細かくチェックを行い環境の変化に応じて都度設定を修正していくことで、信頼性の高い歩掛・積算を行えます。

電気工事における歩掛・積算と図面作成作業は、多くの時間を奪われてしまう業務の1つです。時間を取られる事務作業のことを、大きな負荷に感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか？

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