水道法改正による水道民営化や公営水道との違い

現代社会を支えているインフラには電気や交通網など、さまざまな種類が存在していますが、その中でも極めて重要性の高いものとして位置付けられるのが水道です。私たちは毎日のように水分を摂取しなければ、健康な状態を保つことができません。また、調理や入浴、洗濯など、毎日のように行われる家事においても大量の水を消費する必要があります。人間1人が1日に消費する水の量は200リットル以上にも及ぶと言われており、その量の水を供給するためには水道が欠かせません。

そんな水道の管理運営に関わる法律である水道法が2018年12月に改正された際に、水道事業に民間事業者が参入することが可能になりました。この記事では、水道法改正による水道民営化と、公営水道との具体的な違いについて、詳しくご紹介いたします。

まず、公営水道の定義について見ていきましょう。公営水道とは、水道法の適用を受ける自治体または自治体に準ずる団体などが、水道事業を運営し、維持管理を行っている水道のことです。つまり、私たちが日常的に使っている上水道や下水道の多くは、この公営水道に分類されるものとなっています。

水道のうち、上水道は社会を維持するために欠かせない水を供給するための設備であり、上水道から清潔な水の供給を受けることができます。仮に上水道に異物混入などの不備があれば、多くの人々の健康に多大な被害が出てしまいかねません。また、上水道のトラブルなどで供給がストップしてしまうと、社会が機能停止してしまうでしょう。さまざまなトラブルを防ぐために、水道は水道法によって厳密に管理されており、その管理役を国と自治体が担っています。

他にも、使い終えられた水を運ぶための下水道も社会の衛生を保つために不可欠な存在であり、上水道と同様に水道法で守られています。前提として、上水道と下水道の多くは公営水道であるということを覚えておきましょう。

従来の日本において、水道はそのすべてが国と自治体によって管理される公営のものとして扱われてきました。しかし、冒頭でも触れた通り、2018年末の水道法改正を境に、水道事業に民営事業者が参入することが可能となっています。前の項目では水道というインフラは公に管理されなくてはならないものだとしましたが、その理念に反する民営化にはどのような目的があるのでしょうか。

これにはまず前提として、全国各地における水道運営の厳しくなっていることが原因として挙がってきます。全国に埋設されている水道の多くは高度経済成長期の後期に設置されたものとなっており、実はこれらの水道は耐用年数が既に過ぎてしまっています。漏水や破損のリスクを防ぐためには、これらの水道管を交換する必要がありますが、老朽化した管の数は膨大なものとなっており、自治体だけでは手が回っていないのが現状です。さらに老朽化だけでなく耐震性の観点から交換が必要とされている管も存在しており、特に人口の少ない地域などでは、水道料金から得られる収入だけでは費用を賄うことができません。しかし、必要な交換を行わないままにしていれば水質の低下や、多くの水道トラブルを招いてしまうリスクがあります。

そこで現状を改善するための策として行われたのが水道法改正であり、水道の民営化です。

水道が公営のものであった以前と比べて、民間が参入することによってどのような変化が起きていくのでしょうか。まず、民間水道を公営水道と比較した際のメリットとして挙げられるのが、競争が生じることによる市場の活発化と価格の低下です。元々水道料金は地域ごとの格差が大きく、高い地域では安い地域に比べて数倍の料金を徴収されているというケースも見受けられました。そこへ民間の水道事業者が参入すれば、価格やサービス面における競争が生まれ、利用者側に選択の余地が生まれます。また、民間事業者による水道環境の維持や改善を見込むこともでき、管理の手が回らなくなっている現状を打破することができるでしょう。

一方でデメリットとしては、民間事業者が水道事業に参入したとしても、経営破綻してしまうリスクがあるという点が挙げられます。まだ国内での水道民営化の事例は少なく、年数も経過していませんが、海外では数多くの国で民営化が行われたケースが存在しています。しかし、水道の民営化によって水質やサービスが悪化したり、価格が高騰してしまったケースも存在しているため、慎重に行動しなければいけません。これまでとは大きく異なる形での水道運用となっていくため、現状民営化によって水道を取り巻く環境がどう変化していくかは、不透明な状態だと言えます。

公営水道と民間水道は運営の形式は大きく異なりますが、インフラとして担う役割に変わりはありません。水道施設に不備があれば、社会への水の供給が滞り、社会が立ち行かなくなってしまうでしょう。

そのため、民間化された水道においても、水道管に関わる施工を行う際には指定給水装置工事事業者が手掛けることが必須となります。施工に伴う各種申請書類、施工図面の提出なども義務となっており、水道工事業者が手掛ける事務業務については、これまでとほぼ変わらない手順が必要になると言えるでしょう。水道の民営化が今後、活発に進んだ場合にも、水道工事業者は変わらず高い意識と向上心を持って施工に取り組んでいかなければなりません。

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